レポートアジアデザイン会議2021.4.12
2020年11月29日午前中の「日中デザイン会議」を終え、午後に行われたのが「アジアデザイン会議」です。デザイン教育に携わる日本含め7ヵ国のアジアの大学がオンライン上で集まりました。COVID-19の感染拡大状況が各国異なる中、今教育がどのように行われているのか? 各国の歴史的な背景から、現在デザイン人材に求められる資質は何か? などの情報共有に始まり、広くアジアのデザイン系大学が連携することで、新たな学術研究分野の創出を目指すことなど、幅広いトピックが取り上げられました。
アジアにおけるデザイン学教育研究取り組みの共有
会議では、日本の2大学とアジアの6大学がデザイン系学部の成り立ちや理念、取り組んでいる国際連携について発表が行われました。それぞれの国の状況や、それによって求められるデザイン系人材像には多少の違いがありますが、グローバルな情報の行き来がある現代において、社会課題に敏感でイノベーティブなアイデアが求められていることには、各大学共通した課題意識を持っていることが確認されました。
ディスカッション
異なる分野(建築・ビジュアルコミュニケーション・インダストリアルデザイン)間の連携について
いずれの大学も連携の重要性については自覚的でしたが、大学そのものが連携を前提に設立されたか、縦割りのカリキュラムが実施されているところに後から連携を始めたかによって、運営のスムーズさには違いが見られました。学際的な連携をとるためには、具体的なプロジェクト実施が有効であるという意見が聞かれ、例えばある大学では、養護学校をプロジェクトの中心に据え、建築や介護器具のプロダクトデザイン、システムデザインなど異なる専門分野を持つ学生たちが共同研究を行っており、実用化もされていると発表されました。
一方で問題点を感じている大学もあり、学生が異文化融合的に学ぶ環境にあったとしても、専門性や正確さを求められる研究者・教員がそれ以外の分野について言及しにくい傾向にあること、教育者側にも融合型の人材の必要性を感じていることが共有されました。また、横断的な研究は業績の評価がされにくいことを今後の課題に挙げた大学もありました。
デザイン系大学のアジアにおけるネットワーク構築の可能性について
アジアにまたがる大学間の連携プラットフォームの構築についての話題は、自然な流れでコロナ禍でのオンラインを利用した授業やプロジェクト実施の意見交換ともリンクしながら、各大学から活発な発言がありました。国によってCOVID-19への対策や感染状況は大きく異なり、ほとんどの大学が時機によってオンラインと対面のハイブリッドで授業を行っている状況が分かりました。
オンラインでの授業・プロジェクトならではの利点として、さまざまな国の優れた客員教授と連携した授業が可能であること、同じようなコースを持つ教育機関と内容を共有できることなどが挙げられました。一方で課題として、誰もが同じインフラやネット環境にあるわけではないこと、建築やプロダクトデザインなど実地での活動が必要なものについては、まだ方法が十分ではないこと、交流の質がやはり対面とは異なることなどが挙げられました。
アジアのデザイン系大学間のプラットフォーム構築には、参加者全員から前向きな賛同が得られました。互いに行き来して研究や調査しあうことが困難な現状にあって、人的ネットワークの存在は、教育や研究において大きなメリットがあるという意見があり、そのためにプラットフォームが果たす役割は大きいと確認されました。さらに、実際にこのオンラインのプラットフォームを利用していくつか共同のプロジェクトを行うのはどうか? という積極的な提案もなされました。ポストコロナを座して待つのではなく、積極的にできることに取り組もうという機運の高まりが見られるディスカッションとなりました。
<日時>
2020年11月29日
<参加大学>
九州大学大学院 芸術工学研究院
千葉大学
京都工芸繊維大学
韓国KAIST
インドネシアバンドン工科大学
香港理工大学
シンガポール南洋理工大学
タイシラパコーン大学
台北科技大学
会議のダイジェスト版は以下からご覧いただけます。
<お問い合わせ>
tsuruta.miwa.226@m.kyushu-u.ac.jp