活動国公立デザイン系大学連携で行う地域企業と無印良品との製品デザイン開発2023.10.3

研究責任者:芸術工学研究院 准教授 杉本美貴
キーワード:国公立デザイン系大学連携、製品デザイン、地域産業


 本テーマは、九州大学未来デザイン学センターが推進する国公立デザイン系大学連携の活動の一環として、株式会社良品計画(以下、無印良品)の協力を得て、金沢美術工芸大学との合同プロジェクトとして実施した。九州大学はどちらかというと企画やコンセプトに強く、金沢美術大学は表現力や造形力に強い傾向があるなど、他大学の学生が入り交じってプロジェクトを行うことで良い刺激を与え合い、相乗効果が発揮されることが期待される。

 九州大学および金沢美術工芸大学は、地方に立地する大学の使命として積極的に地場産業や地域の活性化に向けた活動を行なっている。一方、無印良品でも「感じ良い暮らしと社会」の実現を目指し、地域活性化に向けた取り組みが進められている。国の政策としても、将来にわたって「活力ある地域社会」を実現するための施策の一つに「地域資源・産業を活かした地域の競争力強化」が挙げられている。こうしたことから「地場産業や伝統工芸の技を活かした無印良品らしい製品」をテーマに、九州大学は福岡県を中心とした九州の地域企業、金沢美術工芸大学は北陸の地域企業と共に、国内外で人気も知名度も高い無印良品を巻き込みながら販売・訴求できる製品をデザインした。

 プロジェクトは2022年10月から2023年3月までの約5か月間で行なった。プロジェクトには九州大学は学部3年生から修士2年生までの17名、金沢美術工芸大学は学部2、3年生の11名が参加した。

 初めに無印良品の経営理念や企業活動についてのデスクトップ調査、商品や店舗の観察調査などから「素材感× シンプルなのに機能的」「『使う』の拡張」「ぴしゃっとした暮らしにしたい」など、両大学混成のグループワークで無印良品らしさについて考察した。次に、それぞれの地域の地場産業や伝統工芸について調べた。調査は文献やインターネット調査に加え、実際に地場産業や伝統工芸を製造する地域企業を訪問し、製造現場の観察や職人へのインタビュー調査などを行った。その中から各自が興味を持った技を選び、アイデア検討を進めた。

 2022年12月に金沢美術工芸大学にて中間検討会を行い、無印良品のデザイナー3名から、使い勝手や審美性などの一般的なプロダクトデザインの観点に加え、無印良品のものづくりの考え方の観点からも助言をいただいた。それらの助言を参考に、各自のアイデアの方向性や修正点を明確化した。その後、地域企業と一緒にものづくりやコストなどについて検討を繰り返しながらアイデアをブラッシュアップしていった。

 2022年3月に最終検討会および展示会を行い、無印良品のデザイナー3名から、地域の技が活かされているもの、無印良品のものづくりの考え方に合っていること、使い勝手や審美性に優れるもの、という評価基準から、商品化の候補となる8つのデザイン案が選定された。展示会は九州大学大橋キャンパスのデザインコモンで行い、2日間で約120名の来場があり、非常に好評を得た。

 選定された8つのデザインは地元企業から商品化され、2023年9月に無印良品の「天神大名店」「大丸福岡天神店」「天神ショッパーズ福岡店」(以上、福岡市)、「野々市明倫通り店」(以上、金沢市)で開催される「つながる市」にて展示・販売されることとなった。


本研究は令和4年度未来デザイン学センター少額研究助成を受けたものです。