レポートナノセルロース×土 ~ナノセルロースが器の形を自由にする~ 実験レポート2「ナノセルロースを混ぜた土に保水性があるか」2020.1.14

2018年からスタートした九州大学芸術工学研究院と農学研究院・近藤研究室が連携し、脱プラスチックをテーマに掲げるナノセルロースxデザインプロジェクト。2019年度も継続して進めているいくつかのプロトタイプ制作のうち、土とナノセルロースをかけ合わせた器の実験レポートをお伝えします。ここでは、ナノセルロースの2つの性質である「土を固める」と「土の保水性を保つ」を使い、今までにない植物の器を試作することを目的としています。

2018年のナノセルロースxデザインプロジェクトの活動はこちら

実験レポート2「ナノセルロースを混ぜた土に保水性があるか」
ナノセルロースと土の器を作るにあたって、実験1「ナノセルロースで土が固まるか」に続いて、今回は「ナノセルロースを混ぜた土に保水性があるか」を検証するために、次の手順で実験しました。

実験の方法
1- 実験用土(水・ナノセルロース・ボンドの組み合わせを変えたもの)を作る
2- 実験用土に植物を植え、自然乾燥する
3- 植物が枯れないかどうか検証する

1- 実験用土を作る
観葉植物用土・ピートモス・バーミキュライト、この3種類の土をよく混ぜて、植物の生育に適した実験用土をつくる。

土を固めるために、実験1で試した次の4種類の液体と土を混ぜ合わせる。(1) 水のみ、(2) ナノセルロース+水、(3) ボンド+水、(4) ボンド+ナノセルロース+水
※今回使用したボンドは、建築用壁紙に使われるもので、成分は酢酸ビニル樹脂(41%)、水(59%)のみ

▲(2)のナノセルロース+水と土を混ぜている様子。ボウルに水が残らず、ハンバーグのタネのように、もっちりしている。

2- 実験用土に植物を植え、自然乾燥する

▲左上から時計回りに(1) 水のみ、(2) ナノセルロース+水、(3) ボンド+水、(4) ボンド+ナノセルロース+水

今回は「ハツユキカズラ」と「ホワイトタイム」の2種類の植物を植え、14日間自然乾燥させる。

 

3- 植物が枯れないかどうか検証する

▲左が(1)水のみ、右が(2)ナノセルロース+水。この二つには大きな違いは見られなかった。

カップから外してみると、(2)ナノセルロース+水の土は固まっていた。

予測では(4)ボンド+ナノセルロース+水の方が固まるのではないかと予測していたが、下写真のように崩れた。

ボンド入りの水溶液を入れた(3)と(4)は見事に全て枯れた。植物は酢酸樹脂ビニルに弱いと考えられる。鉢植えの際もボンド独特の臭いがしていたし、14日間乾燥させた後もボンドの臭いは消えなかった。

 

もう一種類の「ホワイトタイム」は、植え替えのストレスに耐えられなかったためか、乾燥に弱かったためか、全て枯れた。

しかし、この植物でも同様に(2)ナノセルロース+水の土は綺麗に固まっていた(写真内右上)。

予想外のことであるが、「ハツユキカズラ」・「ホワイトタイム」共に、(2)ナノセルロース+水の土には大量のカビが生えた!ナノセルロースの持つ保水性と関係があるのかもしれない。ちなみに、ボンドが混ざった土や水のみの土には全くカビが見られなかった。

 

「ナノセルロースを混ぜた土に保水性があるか」実験のまとめ
・実験結果から、植物が水だけよりもナノセルロース入りの土の方が枯れにくいかどうかは、明らかな差が見られなかった。他の植物でも実験する必要がある。
・ナノセルロース入りの土の保水性は確証できなかったが、固まることは分かった。
・植物はボンドに弱い。
・カビもボンドには弱いが、ナノセルロース入りの土だけに繁殖する。

実験後、一度乾燥して固まった(2)ナノセルロース+水の土は、思い切り水をかけても崩れなかった。

引き続き「ナノセルロースと土の器」制作のための実験を継続し、その結果を随時ご紹介します。

[日付]2019年9月29日〜10月21日