レポートナノセルロース×土 ~ナノセルロースが器の形を自由にする~ 実験レポート1「ナノセルロースで土が固まるか」2019.12.3

2018年からスタートした九州大学芸術工学研究院と農学研究院・近藤研究室が連携し、脱プラスチックをテーマに掲げるナノセルロースxデザインプロジェクト。2019年は芸術工学研究院の秋田直繁助教が担当する大学院生向けの授業に加え、昨年生まれたアイデアを発展させ、2019年度はいくつかのプロトタイプ制作を進めています。

その一つ、「ナノセルロースと土の器」の実験の様子をレポートします。この作品制作では、ナノセルロースが生み出す2つの性質である「土を固める」と「土の保水性を保つ」を使い、今までにない植物の器を試作することを目的としています。

 

「ナノセルロースって何?」「SDGsって何?」

プロトタイプ制作を通じて、素朴な疑問や好奇心から、少しづつSDGsに興味を持ってくれる人の輪を増やすことを目指しています。脱プラスチックという大きく遠く感じてしまいがちな環境問題を、身近なこととして関心を持てるよう、このナノセルロースと土の器が、誰かの興味のきっかけになったら、と願いを込めて制作しています。

 

今回は、ナノセルロースと土の器を作るにあたって、まず「ナノセルロースで土が固まるか」を検証するために、次の手順で実験しました。

実験の方法

1. 水・ナノセルロース・ボンドの比率を変えて土に混ぜる
2.自然乾燥する
3.固まるかどうか検証する

 

1. ナノセルロース液の準備

濃度10%のナノセルロース20gを濃度1%になるように200mlの水で希釈する。どろっとしたマヨネーズのような質感に。

「土を固める」目的のため、4種類の液体を準備する。
(1)ナノセルロース+水
(2)ボンド+水
(3)ボンド+ナノセルロース+水
(4)水のみ
※今回使用したボンドは、建築用壁紙に使われるもので、成分は酢酸ビニル樹脂(41%)、水(59%)のみ

 

ここで、ナノセルロースの特性であるエマルジョン効果(2つの物質を混ざりやすくする)が見られた!▲(1)ナノセルロース+水は、綺麗に混ざる

▲(2)ボンド+水は、泡だて器で力を込めて混ぜてもボンドが溶けず底面に残る

▲(3)ボンド+ナノセルロース+水は、3分もかからない内に、力をかけなくてもすんなりと混ざる。ナノセルロースの効果が見られる。

 

土はバーミキュライトを使用。木くずのような見た目で、多層構造のおかげで保水性に優れた土である。混ぜる土や水分の体積は全て同じ。

 

▲(左)水のみ、(右)ボンド+水、この二つはボウルに水分が残る。

▲(左)ナノセルロース+水、(右)ナノセルロース+ボンド+水、よく水を吸い、ボウルに水分が残らない。もっちりしたクッキーの生地のような状態。

 

2.自然乾燥

これまでの実験で作った4種類の土を、14日間かけて自然乾燥させた。型には製氷皿とシリコントレーを使用。

14日後、歴然とした差が見られた!▲左上から時計回りに、水のみ、ボンド+水、ボンド+ナノセルロース+水、ナノセルロース+水。

ナノセルロース有りの二つは、触ったり地面に落としても目立った損傷はなく、しっかりと固まっている。さらに、ボンド有りと無しの差もはっきり見られた。

▲(左)ナノセルロース+水、(右)がボンド+ナノセルロース+水

ナノセルロース+水を混ぜた土はカラッと軽く乾燥しているのに対して、ボンドが入った土はベタッと水分が残っている。型から外すときも、ナノセルロース+水の土が簡単に外れたのに対し、ボンド入りはなかなか外れなかった。

ハート型の製氷皿でもシリコントレーも同様に、ナノセルロース無しはボロボロと崩れた。ナノセルロース無しの水+ボンド(左上)よりも、ナノセルロース+水の方が綺麗に成形できた。

 

「ナノセルロースで土が固まるか」実験のまとめ
・土にボンドを混ぜるより、土にナノセルロースと水だけを混ぜる方が、綺麗に固まる。
・ボンドを混ぜる場合は、ナノセルロースも一緒に混ぜるとエマルジョン効果で混ざりやすい。
・ボンド+ナノセルロース+水+土、よりも、ナノセルロース+水+土の方が水分を残さずカラッと乾く。

[日付]2019年9月15日〜23日

引き続き「ナノセルロースと土の器」制作のための実験を継続し、その結果を随時ご紹介します。