活動インクルーシブな子ども広場のための整備指針デザインプロジェクト2023.10.3

研究責任者:芸術工学研究院 教授 平井康之
キーワード:インクルーシブ、公園、デザイン

 インクルーシブ公園とは、「みーんなの公園プロジェクト」代表の柳田により「障害の有無などにかかわらず、すべての子どもが自分の力を生き生きと発揮し、様々な友達と共に遊び学べる場所」と定義されています。

 日本におけるインクルーシブ公園の動きは、2020年に東京の砧公園で始まりました。福岡市でも2022年3月に「インクルーシブな遊具広場整備指針検討委員会(途中で整備指針名称をインクルーシブな子ども広場に統一、以下「検討委員会」)」が発足し、その委員長として整備指針策定に携わってきました。

 通常、行政による検討委員会において、委員の主要な役目は行政への助言で、意見を述べて終わることが多くあります。しかし今回は福岡市に認めていただき、委員会と並行した九州大学の研究活動としてユーザーニーズを調査し、整備計画に必要な解決案を作成・提案することができました。これは、検討委員会を主催する福岡市住宅都市局公園部整備課のご担当の皆様の柔軟性と、参加された当事者の方々との達成ビジョンの共有によって実現することができました。

 具体的には、当事者団体であるインクルーシブふくおかとともに舞鶴公園に設置された実証公園にて2022年10月16日、2022年11月10日に計2回のワークショップを実施しました。第1回ワークショップでは、子どもの障がいタイプ別に気づきや課題をヒアリング観察を行い、マッピングを行ないました。第2回ワークショップでは、理想的な遊び方とその広場の要件についてジャーニーマップを用いてヒアリング調査を行いました。その結果、障がいのあるお子さんをお持ちの保護者の方々らと共にニーズを共有し、解決すべき課題を見つけることができました。

 それらの課題をもとに整備計画案を練り直し、2023年1月の整備計画発表に結びつけました。整備指針は通常、遊具中心になりがちでですが、今回は、6つの大項目で構成された利用者視点を重視した整備指針とすることができました。それら6つの大項目のうち3つは遊びに関する項目、残りの3つはアクセス、安心・安全、情報環境に関する項目となっています。それは、子どもの遊び以前に、親の不安の解消やアクセスの確保の重要性を認識したからです。単に物理的な広場のデザイン指針に終わらせない、持続的な活動を可能にする指針の構成となっています。

 この整備計画は、2024年に百道中央公園に作られるインクルーシブな子ども広場第一号の子ども広場に活かされています。また、他の自治体でも参考にされています。

 さらに整備指針発表後の2023年3月13日に、社会的な認知を向上させる目的で、「インクルーシブな子ども広場FUKUOKA」シンポジウムをオンラインで開催しました。全国から専門家や市民など110名の参加者があり、関心の高さを窺わせました。

 今後もこのようなインクルーシブデザインが広がっていくことを期待しています。

https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434148/021400107/


https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/koenkensetsu/midori/inclusive/inclusive_park_in_FukuokaCity.html


本研究は令和4年度未来デザイン学センター少額研究助成を受けたものです。