活動国際的多様な協働によるSDGs実現するデザイン人材育手法に関する研究2023.10.3

研究責任者:芸術工学研究院 講師 張彦芳
キーワード:SDGs、デザイン手法、人材育成

 SDGs Design International Awards(以下SDGsアワード)は、社会を変えることができる若く可能性のある学生から生み出されたデザイン提案を表彰し、彼らを勇気づけるとともに、それらの解決策を世界の多くの人々とシェアし未来のより良い社会づくりに活かすことを目標にしている。これまでの4回の開催を経て、多くの素晴らしいデザイン提案がこのSDGsアワードから生み出されてきた。

 本研究は、SDGsアワードで生まれた学生からの斬新な社会課題への解決策をただの提案に終わらせず、それらのアイデアの仕組みを具現化し、実現可能な社会実装するためのデザイン人材育成の手法に関するものである。

 具体的に、SDGs アワードでBest Innovation賞を受賞したチームが所属する中国東華大学機械工程学院工業デザイン学部の教員、学生と共に、更に上海にあるSDGsに取り組んでいる企業BIG FISH COMMYUNITY DESIGN CENTER(以下BIG FISH CDC)、地域住民を巻き込み、国際連携体制を作り(図1)、デザイン提案の社会実装プロジェクトを通し、デザイン人材育成の可能性を探った。

図1. 本研究の連携体制図

 社会実装プロジェクトは、学生を中心に、コロナ禍における上海の高齢者同士のコミュニケーションの機会を改善するため、そこに住む高齢者へのインタビューを通して具体的なコミュニケーションの課題を明確にし、改善提案をもとに、高齢者と協働し古い陶器や磁器を活用してアート作品を制作、その後、それらをパブリックアートとして古くからあるアーケード商店街に展示した。これにより、コロナ禍で失われた高齢者同士のコミュニケーションが再開するきっかけとなり、当事者以外にも、より多くの人々がこのような社会課題に対する意識を高めることを可能にした(図2、図3)。

図2. SDGs教育プロジェクトの調査風景

図3. SDGs教育プロジェクトの制作現場 

 本プロジェクトを通し、筆者がSDGsデザイン人材育成のための社会実装プロジェクトを運営側の視点から、日本の九州大学、中国東華大学の教員、学生、地元企業(BIG FISH CDC)、地域高齢者の参加に対しても調査を実施し、国際連携デザイン人材育成の課題に関して詳細に整理・分析した。A. 国際連携体制、B. 国際連携教育活動の環境づくり、C. 教育活動の運営管理、D. 教育活動の評価の4つの課題を明確し、プロジェクトのフェーズにより、課題の変化も整理した。

 上記の研究成果を執筆し、2023年1月9日-11日India Institute of Science, Bangaloreで開催した 9th International Conference on Research into Design(ICoRD’23) にて、研究論文「Research on the Difficulties Faced in Developing Human Resources in the Design Field to Realize the SDGs Though Cross-Cultural Collaboration」を発表した。

 今後更に、研究活動を継続し、日本におけるSDGs教育の連携体制、環境づくりに関して調査をし、SDGs人材育成する教育者に生み出されたアイデアを社会へ実装するための仮設を立て、普遍的な知見を提供して行きたいと考えている。


本研究は令和4年度未来デザイン学センター少額研究助成を受けたものです。